2013年3月3日日曜日

ついに日本の憲法が変わるの?憲法96条(改正要件)緩和の論点まとめ

日本国憲法96条 憲法改正要件・憲法改正手続きの緩和に関する論点まとめ


【現状】

2013年3月現在、自民党、公明党、日本維新の会、みんなの党、民主党の一部などの間で、日本国憲法96条の憲法改正手続き条項を改正(要件の緩和)しようという動きが広がっている。

この「憲法改正の手続き」は、憲法とは何か、どのような憲法が理想的なのか、を考える上で、非常に象徴的だし、面白いものである。

以下が、日本国憲法の改正手続条項である。(「憲法改正手続き」というと、「日本国憲法の改正手続に関する法律」(国民投票法)に関する議論も含んでしまうので、なるべく「憲法改正要件」という用語にここでは統一したい。)

第9章 改 正
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


この条文を、具体的には以下のように改正しようとしている。

第9章 改 正
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の過半数の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

この争点は、2013年夏の参院選で有権者に問われることになるが、今後の憲政を大きく左右する重要な問題である。

2012年末の衆院選で、衆議院は、自民公明だけで2/3を超え、憲法改正の発議が現実味を帯びている。これに加えて、憲法改正に積極的な維新の会・みんなの党も議席を伸ばした。

2013年3月時点での参議院の議席は、自民公明を合わせても過半数を超えない状況である。しかし、2013年夏の参院選で、自民公明が議席を伸ばし、さらに維新の会、みんなの党が議席を伸ばせば、日本国憲法が施行されてから初めて憲法改正の発議が現実味を帯びる。



【問題提起】

この動きには、賛否両論がある。

賛成側の代表的な主張は、以下のようなもの(日本国憲法改正草案 Q&A PDFファイル - 自由民主党から引用)である。

現行憲法は、両院で 3 分の 2 以上の賛成を得て国民に提案され、国民投票で過半数の賛成を得てはじめて憲法改正が実現することとなっており、世界的に見ても、改正しにくい憲法となっています。
憲法改正は、国民投票に付して主権者である国民の意思を直接問うわけですから、国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり、かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまうと考えました。

つまり、国民の意思を憲法に反映しやすくするために、3分の2ではなく過半数にすべき、ということである。平たく言えば、政治家だけでどうこう議論しているのではなく、民主主義の世の中なのだから、国民に積極的に信を問えばよいではないか、という話である。


一方、反対側の代表的な主張は、96条の改正の真意は、9条の改正にある。9条を改正するのが政治状況的に難しいので、まずはその前段階として改正要件の方から緩和しようということだから、賛成できない(主に護憲派の人たち)といったものである。

ほかにも、「過半数では通常の法律案の議決と同じであり、それでは、時の政権に都合のよい憲法改正案が国民に提案されることになって、かえって憲法が不安定になる」(同引用)から、過半数は行き過ぎ、という主張もある。



【各論点の分析】

憲法改正条項に関する論点は複数にわたるので、ここでそれぞれの論点について論じたページヘのリンクをまとめる。

・ 海外との憲法改正要件の比較

・ 憲法改正をしないことによる弊害

・ 自分の手で自分を縛るとは

・ 憲法保障の観点から



【私見(結論)】

以上の各論点についてそれぞれページで論じたが、私の結論は、この96条の改正要件を「過半数」に改正することには、賛成である。その理由については、各論点のページを見てほしい。

しかし、この96条改正に賛成とはいえ、まだ日本国憲法は発展途上段階にある。

それは、9条に限った問題ではない。9条以外の憲法の欠陥がいくつもある。

本当に問題なのは、96条を改正した後に、どのような憲法改正(憲法政策)をしていくのか、ということである。

特に、96条改正の後、ほかの立憲主義(つまり、国家権力を統制すること)的態勢を十分に整えないままに、安易に自民党的な9条の改正に進むことは避けなければならない。

そのような立法論ならぬ立憲論について、このサイトを中心に考察していきたい。

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